789 多田図尋常小学校の人々 「何が起きるか予想できないタダーズだった」


2時限は社会は放課後デイサービス児童指導員の渡邉愁さんの「ジェンダーと私2」というテーマのお話しでした。授業はインタビュー形式で、まずトップバッターの井上清三さんは渡辺さんの恋愛体験や高校部活動をしていた武道の剣道について質問されていました。
そして2番手のミュージックバリスタT.eng氏はお酒好きな渡辺渡邊さんにおすすめを伺っていました。渡邊さんは基本的にはビールで、サッポロならギネス、
クラフトならアフターダーク、バーレーワイン、ウイスキーは飲まず、日本酒なら静岡の下田美人などと、
次々と好きな銘柄をあげられていました。お酒の専門用語が飛び交った時間でした。
3番手の校長の私が聞いたのは、昨年、最もよかった事。渡邊さんによると、最良は、ご自分がメンタルでタフなことが発見できたことでした。そして嫌いな食べ物はキノコ全般、好きな食べ物はスイカ。好きな芸能人は安全地帯と鬼束ちひろ。昨晩食べたのはタイカレーだったそうです。渡邊さんがさらに身近に感じて来ました。そして最後は渡邊さんが無農薬野菜生産者の坂梨勝一さんにインタビュー。坂梨さんが農業をはじめるまでの経緯を丁寧に聞いておられました。
渡邊さんのお話しをさらに聞きたい方もおられますので次の授業をお願いしたいと思います。
まずT.eng氏の感想の一部です。
●どこかで渡邉さんは1コマ分を酒で授業やってくれるかな?
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また渡邊さんにインタビューされた日本色覚差別撤廃の会事務局長の井上清三さんから、奥深い感想をいただきました。井上さんの社会授業のページと重複しますが、再度、ご紹介します。
「私のバカな偏見が融けていく」
 私は長年、色覚差別撤廃の運動に取り組んできました。ただ、取り組み始めたのは、45歳と大分年齢を重ねてからのものでした。子ども時代、色覚検査表が読めないことに劣等感を持っていました。10代では、進学就職の際に制限があることを知りました。色覚当事者と言っても、見た目は変わりません。だったら、隠せばいいということと色覚検査表を暗記すればなんとかなるという感じで通しました。色覚当事者が、色覚の知識を知らないまま長年生きてきたのです。当然、「ダメな奴」という自分自身が当事者であるのに色覚差別意識を持ち続けたままです。その後、当事者同士の話し合いに参加することが多くなったのですが、けっこう私のような経験者が多いようです。
私の場合は親が「お前がちゃんとしてないからだ。おまえが悪い。」調でしたので、逆に「何くそっ」調の反発しか起こりませんでしたが、責任を感じてしまった親が「かわいそうな奴」調で対され酷く傷ついた経験をしてきた人もいたようです。医者を早くから諦めた人、車の免許が取れないとずっと思っていた人、結婚を諦めた人等々ホント数えきれい程のストーリーがあります。それにそれに、今でも、「色覚多様性」が言われ「色覚検査によって、色彩識別能力を測ることはできない」という知見が出ていても、一部に進学・就職差別が残っているのです。

色覚に関するだけでなく、差別意識というものは根深く人の身体に根付いているものなんですね。そういうものを一人ひとり意識しない限り、差別はずっと根付いたままのような気がします。なんたって、色覚当事者に色覚差別の意識があったもんね。

 

 

 私が色覚当事者であることをカミングアウトしたのは、45歳の時、教育関係の会で「インタビューゲーム」というものをやった時でした。聞かれるままに自分の経験を語り、自分のつらかったことや自分の中の逆差別意識に気づかされたような。こういうことは言った方が、発表した方がいいということを感じたような。それから、色覚差別撤廃の会の運動を知り、今にいたっています。

 もう一つ、自分の差別意識を感じたことがあります。同じころにエイズの問題が大きくマスコミに取り上げられていました。ちょっとしたきっかけで、この運動に少し参加することがありました。その頃、エイズと言えば「恐ろしい病気。触れただけで感染してしまう」なんてデマが飛び交い、私自身「差別意識」を膨らましていた感じがします。でも参加してみて、当事者の話を聞いて、エクササイズに参加して、自分の差別意識を考えさせられたような気がします。この全世界的な運動で、エイズに関する自分の「差別意識」を感じた人は多いように感じます。
 今回、LGBTの当事者である渡邊さんにインタビューさせていただきました。私のバカな好奇心からの質問で失礼があったかもしれません。質問していて、私の「同性に恋をするなんて・・・」という偏見意識を感じました。「女が武道?」という偏見もです。でも、他の人のインタビューで、お酒に興味があることや、きのこがダメということを知り、椎茸が苦手な私は、なんか渡辺さんを身近に感じました。渡辺さんとこれから対することで、私のバカな偏見が融けていくような気がします。こういう偏見・差別、私の身体にはいろいろあるようです。
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この感想をいただき、井上さんとお話しした後、次のようなコメントをいただきました。
「偏見・差別意識」は誰にでもあるよ

「偏見・差別意識」は誰にでもあるよ・・・そういうことは、身近な当事者の話を聞いたり質問したりする中で気づいてくるような・・・そう私は言いたかった。「(性差などの外側ではなく)その人の中身で付き合う」という考えは正論だと思うけど、ちょっとした自分の偏見・差別を意識しないとそのまま残っちゃうよ。未だに社会の中で、色覚に対して制限が残っているというのはそういうことなんじゃないのかな。極端な話、好奇心マックスの質問なんていい機会だと思うけどなあ。そして、そこに出てきた自分の「偏見・差別意識」を話したいし考えたい。

 

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そして最後に渡邊さんからの感想です。
●先日はありがとうございました。一言感想になります。今回は兼ねてから相談していたインタビュー形式での回。やってみて、周りに当事者がいる(あるいは芸術関係者?)方とそうでない方とで違いがあるなあという感じ。その中で「剣道など男っぽいもの」というズレのあるラベリングが聞こえた。おすすめの本やサイトとかを紹介してもいいかもしれない。
 その後、お一人の参加者が、そんなこと(セクシュアリティなどの個人を構成する一要素)をいちいち言わなくていい世界が本来は当たり前と仰る。まさにその通り!それとたまたま好きだと言った、下田美人からユニークな話が聞けるとは、何が起きるか予想できないタダーズだった。