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817 多田図尋常小学校の人々 「本来の福祉の意味に帰る日を目指して」



●2時間目/放課後 社会
 「さんわーくは、私のアート作品」
〜仏師、木彫りアーティストから福祉施設理事長へ〜
  藤田靖正さん
       NPO さんわーくかぐや 理事長

大倉山ドキュメンタリー映画祭で藤沢の障害者福祉施設『かぐや』の混沌と調和が同居する不思議な空間を描いた映画『かぐやだより』が上映されました。上映会の打ち上げでたまたま隣におられたのが理事長の藤田靖正さん。そこでのお話があまりに魅力的だったので、尋常小学校の「誰でも先生」をお願いしたところ快諾していただき、今回の授業が実現しました。

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『さんわーく かぐや』は様々なアート活動を展開しています。写真のように施設の中では裏の竹を割って長さ20メートルの樋を作って巨大流しソーメン大会を決行したり、湘南台の駅で、切り出した竹を使って、しつらえたスペースで地元のお茶でお茶を立てたり、藤沢の海岸から人力で海水を汲んで運び、それを自分たちで作った薪を使ってじっくり煮詰めて、カリウムなどミネラル豊富な高級塩を作って味わったり、さらには新潟まで出張して巨大な竹のインスタレーションを作ったりしています。
 効率第一の資本主義社会の中では障害者本人も家族がとても生きづらくなっています。その中であえて手間暇をかけ、多くの方の協力を得ながら、一緒に活動をすることで、みんなが元気になっていくのです。私にとって特別なイベントだけでなく日々の生活そのものもアートなのです。
 私が一番大切にしていることは、障害者福祉を専門家任せにしないことです。私自身も福祉の公的資格は持っておらず、『かぐや』の立ち上げから今までやってきました。亡くなった精神障害を持つ妹の居場所作りから始まった『かぐや』の定員は10人です。それは大きな施設では難しい一人一人に丁寧に対応することと、言ってみれば「もう一つの家族」を目指しているからです。
 利用者さんの中には37年間、病院で過ごし、初めて出会う社会として『かぐや』を選んでくれた人もいます。ここでは原則的に誰でも受け入れるようにしています。もちろん利用者さんの状態は日々、変化するので、調子が悪く不安定になった利用者さんからスタッフが殴られたりすることもあります。でも今の日本では憲法で保障されているはずの基本的な人権が精神障害の方々に対して十分守られていません。ある八王子の病院で精神の障害者がベッドで、栄養チューブをつけられて拘束され、床ずれ部が化膿して重篤になったというニュースもあります。同じ人間として普通に生活する場を求めることは当たり前のことだし、『かぐや』は、そんな場を目指しているのです。今回、ズームで様々な方と出会いましたが、よりリアルにお会いしてお話したいので、ぜひ『かぐや』に遊びにきてください。

 

私が印象に残ったのは、障害を持った人たちの人権さえも保証されないこの資本主義社会を変革しようと、アートを武器に挑戦を続ける藤田さんの姿と、その熱い思いです。私も無料喫茶店という小さな実験を重ねることで社会に針穴のような小さな風穴を開けるぞという思いを新たにしました。ありがとうございました。 校長(中城)

無農薬野菜生産者の坂梨勝一さんの感想です。
よかったです!藤田さんの思いや体験と、『かぐや』の活動とのつながりがよくわかるお話しで、心のモヤモヤはスッキリ!映画祭のパンフレットの『かぐや』の案内文だけでは、ピンと来なかった(軽くムカついた)けれど、今はすっかり『かぐや』を覗いてみたい!
●タダーズの最高技術顧問のT.engさんの感想です。
 それにしても藤沢にクリエイティブなネタがあったとは!
●元小学校教師の井上清三さんの感想です。
えっ、「家具屋」じゃないの?
 「サニーワーク カグヤ」とあるので、今度の先生は「家具屋」さんかと思った。彫刻家で、施設の長をしていると聞いていた。どんな家具を作っているんだろうかと楽しみにしていたんだ。前に、家具を作っていた人が先生になっての授業もあったしね。ところがところが、先生の説明は施設の話と彫刻の話だけ。作業施設の場所は竹藪の中に出来ているとは言っていたけど、なんで「家具屋」さんなのに「家具」の話をしないのか不思議に思っていたんだ。最後に質問を振られたので、「なんで『かぐや』という名前になったのかな?」と聞いたわけ。「かぐやひめ」から来てたんだ。だから竹か・・・。みんな、知ってたのかなあ。知らなかったのは・・・もしかして私だけ? ホント、ボケてんなあ。
●最後に藤田さんのメールを紹介します。
昨日は、大変お世話になりました。どんな「場」なのか全く分からないままの参加でしたが、中城さんのフォローを頂きながら、なんとか『かぐや』で行なっている事を伝えられたのかなと思います、放課後の時間にて、皆さんからそれぞれの福祉を伝えて下さり、双方向のやり取りが生まれた事、嬉しく思います。日本は人権後進国で、弱者に厳しいと、とても感じます。福祉が福祉サービスを脱して、本来の福祉の意味に帰る日を目指して、邁進してまいります。
 学校で学んだ後も、世界はアップデートされ続けています、学びは生涯続きますね。尋常小学校は素敵な学びの学舎だと思いました。素敵な方たちとのご縁を頂きました事、心から感謝申し上げます。またお会いする日を楽しみにしております
さんわーく かぐや 藤田靖正