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822 多田図尋常小学校の人々「次はエーリヒ・クライバーとカルロス・クライバー」


●3限目 音楽
「Coffee Break Music In Tadaz」
  チェロ編第5弾
 「シュタルケルとヨーヨー・マ
 T.eng氏 (音響エンジニア)

 本日の3限目はT.eng氏のDJ「Coffee Break Music In Tadaz」のチェロ編第5弾です。
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 今回取り上げるのは、まずは中城校長の希望のヨーヨー・マ。彼と組み合わせるチェリストを迷ったのですが、やや正道から外れるかもしれませんが、これも天才のヤーノシュ・シュタルケルにしました。
 シュタルケルはブタペスト生まれで、7歳でブタペスト音楽院に入学、11歳でソロデビューし、1945年にブタペスト国立歌劇場の首席チェリストとなりましたが、翌年、出国してヨーロッパで演奏活動を始めました。その時にSPレコードで録音したコダーイの無伴奏チェロソナタが大当たりしてディスク大賞を取って名声を確立します。1948年にアメリカのダラス交響楽団の首席チェリストとなり、翌年にはフリッツ・ライナーの招きでメトロポリタン歌劇場の首席チェリストとなりました。1953年にライナーがシカゴ交響楽団に移ったのに合わせて移籍。レコード会社は当初小さなピリオドと契約しましたが、1950年に再びコダーイ無伴奏チェロソナタが大ヒットしました。有名になった後にEMI、フィリップスなどで録音をしていますが、東欧の作曲家、コダーイやバルトークからベートーベンなどの録音で高く評価されています。引退後は後進の育成にも力を入れてインディアナ大学の教授となり、各地で公開レッスンやセミナーなども行ない、また現代のチェロの教科書と言われる「チェロメソード」を著し、2013年に88歳で亡くなりました。
 演奏は厳格さと同時に端正さを持っており、その音楽性の高さからパブロ・カザルスの後継者と目されていました。弟子の井上頼豊は彼を「チェロをバイオリンのように朗々とうまく弾く」と評し、技術的に究極まで落とし込んで、その中に感情を入れる、絞って絞り抜いた後、最後にひとつまみのエッセンスを入れる、そんな演奏でした。派手な演奏ではないため厳格な曲に相性が良いのですが、ベートーベンも見事に弾きこなしています。
 

 

 一方、ヨーヨー・マはパリ生まれで中国人の両親とも音楽家。小さい時からさまざまな楽器に触れながら育ち、4歳の時に大きな楽器が欲しいと、16分の1のチェロを作ってもらいました。7歳で先生について演奏を学び、8歳でレナード・バーンスタインのアメリカのテレビショーに出演して注目されます。19歳でジュリアード音楽院に入学後にコロンビア大学、ハーバード大学に入学するほどの天才です。演奏ジャンルはとてつもなく広く、バッハやハイドンなどのバロックから現代、さらにクラシックからジャズ、タンゴをこなす雑食性ともいえます。特に「リベルタンゴ」は日本でも大ヒットしました。また映画のサウンドトラックなども担当しました。とにかくジャンルに囚われないその活動は、生きる伝説とさえなっています。

国連のアナン事務総長から平和大使に任命されました。パブロ・カザルスのように戦うチェリストというよりも、「色々な人種が手を取り合う」そんなチェリストと言えるでしょう。
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 これまで5回に渡って10人の天才チェリストの演奏を聴かせていただきました。カザルスとヨーヨー・マの名前しか知らなかった私(中城)も、それぞれ持ち味の異なった天才チェリストがこんなにいたことに改めてびっくりしました。またチェロという楽器は、ヴァイオリンよりも音域が低いためか自然な感じで、「聴くぞ」と構えなくとも、すっと体の中に入ってくるのが不思議でした。今回のゲスト講師の児玉真由美さんも感想で「音楽が1日の始まりに心に心地良く」と書いておられ、十分に楽しまれたようでした。最後にT.eng氏の一言感想です。
次回はエーリヒ・クライバーとカルロス・クライバーを取り上げます。それにしても長続きの基本はやはりフォーカスが絞り込めていることでしょうか?