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828多田図尋常小学校の人々 「必死に考えていたら眠れなくなっちゃった」


●1限目 数学

「やわらかな思考を育てる
           数学問題集」

 元小学校教師、井上清三さんの好評のオンライン全力投球授業です。旧ソ連の天才を育てる問題集から井上さんが選んできました。

まずは前回出された宿題が2問です。
1問目:「199×991個のマス目でできている方眼紙に対角線を引くと、何個のマス目を横切ることになるでしょうか?」

 この宿題は校長(中城)も方眼用紙を使ってあれこれ考えたのですが、途中でギブアップ。井上先生は一日試行錯誤の上「横切るマス目数=縦のマス目数+横のマス目数ー1」という式に到達して見事正解でした。
2問目:「ピートの猫は雨が降る前にはかならずクシャミをします。今日、その猫がクシャミをしました。『じゃあ、もうすぐ雨だな』とピートはいいます。ピートは正しいでしょうか?」

 これはすぐわかりました。例えば猫が花粉症や風邪だったら、これは成立しませんから。

 そしていよいよ本日の問題

「3人の学者が汽車に乗っています。汽車は数分間かかってトンネルを通過しますが、その間は真っ暗闇です。トンネルから出た時、3人とも同僚の顔が、窓から入り込んだススで黒くなっているのに気づき、大笑いしました。しかし突然、3人の中でも一番頭のいい人が自分の顔も汚れているに違いないと気づきました。この人はどうしてこの結論にたどりついたのでしょうか」
 私は「だいたい煙が充満する同じ車両にいて、汚れなかった客がいると思うなんてあり得ない。問題として成立しない」と考えると問題に取り組めませんでしたが、ゲストの小野さんは「この出題者の意図は自分と他者の認識の問題ですぐわかりました」

 私はどうやらこの問題集との相性が良くないみたいです。そして井上さんの感想です。

 

●今回の授業は、ここ3回程続いている、旧ソ連の天才を育てる教育の一環として作られた数学の問題を考える授業だ。大本は、岩波書店から出ている「やわらかな思考を育てる数学問題集」で、中に出ている問題を一つ一つ解いている。
 前回、宿題に2問出しているので、それの解答を紹介して、新たな問題を2問くらいやろうかという計画だった。宿題2問の内1問は、本に出ている解答がよく分からずで、私が必死で考えて導き出した解答だったと思う。前回タダーズが終わってすぐに自分でやった問題で、1日ぐらい考えたろうか。それから2週間たっているので、大事な説明を忘れていたもんだ。その日の夜、校長から電話があって「5マス×5マスでは導き出した法則では合わない」と言って来た。その時やっと思い出した。お互い「素」の時は成り立つけど、約分できる時は違うやり方になるわけ。電話ではうまく説明できなかったので、寝ながら必死に考えていたら、眠れなくなっちゃった。

 

 宿題の説明で時間を使っちゃったようで、というか、つぎの問題に時間がかかったのかな。1問しかできなかった。これもなかなかに難しい・・・と思ったけど、Tエンジニアさんと大学生の小野さん、バッチリ分かったそうで、ごく短い言葉で表現していた。私にはよく分からなかった。若い人は、パッと見て理解しちゃうんだろうなあ。私の頭では無理なので、夜時間をかけて解いてみた次第。(中略)さてさて宿題です。
問15
 コップに入っているミルクから大さじ3杯分のミルクをとりだして別のコップに入っている同じ分量の紅茶に加え、よくまざるようにかきまぜます。かきまぜたものから大さじ3杯分をとりだし、それをミルクのコップにもどします。さてこうしたあとで紅茶のコップの中のミルクの割合と、ミルクのコップの中の紅茶の割合とを比べたとき、大きいのはどちらでしょうか。
 問16
 3×3のマス目に1から9までの数を入れて魔法陣をつくりなさい。魔法陣というのは縦、横3つずつのマス目の中に数字を一つずつ入れ、縦、横、斜めのそれぞれの数の合計をみな同じにするものです。
 

 小野さん、途中で抜けてすみませんでした。最後まで聞きたかったあ。

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*その後、校長の私もマス目の問題が気になり、マス目を高層ビルの部屋など具体的な事例に置き換えて考え続け、自分なりの解き方にたどり着けました。いやあ、解答不能に見えた問題でも、考え方を変えるだけで簡単に解けるとわかった時は舞い上がりました。

今回は井上さんが地道にデータを集め、それを数式化して検証をするというアプローチの仕方を見せてくれました。そしてこの方法こそが科学的な進歩を担ってきたのだと思いました。一方、私はいきなり問題の仕組みの解明を試みて失敗して諦めるパターンです。私が数学が苦手だった理由もなんとなくわかってきました。でも、この問題集でジタバタするのが楽しくなってきました。