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850 多田図尋常小学校の人々「次回はクイケンとビルスマを取り上げます」


●3限目 音楽

 「Coffee Break Music In Tadaz」

 本日のバリスタの気まぐれブレンド

「新旧『四季』対決!」

イ・ムジチとエウローパ・ガランテ

T.eng氏(音響エンジニア
   /趣味はオーディオ、PC製作、鉄道 etc.)
 
 校長が学生の時に、日本中でイ・ムジチの演奏するヴィヴァルディの『四季』が流れていました。今回、T.eng氏はこの「四季」にスポットライトを当てていきます。
 
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ヴィヴァルディの「四季」
「四季」はイタリアの作曲家アントニオ・ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」の、第1から第4曲(春、夏、秋、冬)で、それぞれが3楽章でできており、ソネット(定型詩)がついています。ソネットの作者は不明ですが、ヴィヴァルディ自身という説もあります。楽譜はアムステルダムのル・セーヌの初版パート譜と、マンチェスター公共図書館所蔵の譜面の二つがあり、 エウローパ・ガランテのファビオ・ビオンディはマンチェスター版を使っています。

王道を行くイ・ムジチ合奏団
 イ・ムジチ合奏団は1951年に、サンタ・チェチーリア国立アカデミアに留学していた18歳のフェリックス・アーヨが中心となり、卒業生12人で結成し、1952年にヴェネツアの音楽祭でデビューします。専門の指揮者は置かないで、コンサート・マスターを中心にメンバー全員で、音楽を作り上げるスタイルをとっています。結成当時の演奏を聴いた トスカニーニは彼らの演奏を聞いてえらく感動したとのことです。 彼らの演奏する「四季」は、その濃度においてもクラシック音楽界を揺るがすほどで、 日本でもレコードが 爆発的に売れて、クラシックのミリオンセラーになりました。今でもアナログレコード店の百円コーナーにはいくらでも見られ、少々食傷気味でもあります。でも言ってみれば彼らの「四季」は王道であり、揺るぎない完成形で、有無を言わさない名演でもあるわけです。今回はそのなかでも特に評価の高い2代目コンサート•マスターのロベルト・ミケルッチ盤をお聴かせします。

限界に挑戦するバロック・アンサンブル
                   
   エウローパ・ガランテ
 モダン・アンサンブルの頂にいるイ・ムジチに対して、革新的な解釈をして古楽器で演奏する楽団がバロック・アンサンブル、エウローパ・ガランテです。1990年にイタリアのバロック・ヴィオリニストのファビオ・ビオンディによって結成され運営されています。

 

 ビオンディは1961年にシチリアで生まれ12歳でRAI交響楽団と共演して、16歳でウィーン学友協会でバッハを演奏し、ローマ音楽院では首席ヴァイオリニストとなりました。その後、シャベルロワイヤルなど多くの楽団と共演して、1990年に エウローパ・ガランテを結成します。ソロの演奏や鍵盤奏者との共演活動もし、スタヴァンゲル交響楽団の芸術監督もやっています。その革新的なバロックの音楽的解釈と「かっ飛んだ」演奏は大成功して「バロック音楽の再興の象徴」「ヨーロッパで最も優れた最もスタイリッシュな楽団」として高い評価を得ました。中でも「四季」の革新的で革命的な解釈と、そのロックな演奏は、古楽の世界に新しい風を吹き込みました。特に2000年録音盤は、 「これが古楽?」「 グロテスク」とさえ言われる程に限界まで挑戦し続けています。それこそアイルトン・セナ(中城注:F1ドライバー。F1チャンピオン3回)が鈴鹿やモナコを攻めるかのように、これほどのアグレッシブな演奏は出てこないと思われます。20年前にすでにこんなことをやっていたわけで、いまだに古びることのない先進的な演奏です。あまりにインパクトが強く、彼らの演奏のマネも、越えることもできない…と思うほどに。

質疑応答
質問: エウローパ・ガランテによる バロックの革新的な挑戦はとても面白かったです。でも他のメンバーはどうだったのでしょうか。「もう私はついていけない」などと言わなかったのですか。
T.eng氏:これは難しい問題ですね。大きな威厳を持って「これでやる」と、楽団員を納得させるムラヴィンスキーのようなタイプの指揮者もいます。でも エウローパ・ガランテのように破綻する限界まで攻めに攻める演奏は押し付けられてできるものではないと思います。もともと同じ思いで集まってきたメンバーですから、メンバー相互で限界まで挑戦しあっているのではないでしょうか。

ピリオド楽器演奏の過激(校長の感想
昔、日本中で流れていたのはイ・ムジチの「四季」ですが、今回、
エウローパ・ガランテの過激な
挑戦を聴くことができました。イ・ムジチの艶やかな音色とは違い、やや骨太い音色で、終盤には、いないはずのドラムとベースギターが鳴っていた気がしたのは不思議でした。古典を現代楽器やデジタルで合成する演奏もあると思いますが、当時のピリオド楽器で演奏することでかえって過激になることを感じました。次はT.eng氏の感想です。
T.eng氏の感想
次回はクイケンとビルスマを取り上げます。