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862 多田図尋常小学校の人々「次回はルービンシュタインとツィマーマンを取り上げます」


●3限目 音楽
 「Coffee Break Music In Tadaz」 
 本日のバリスタの気まぐれブレンド

「モノクロ・ショパンor

 ハイヴィジョン・ショパン」

  コルトーとポリーニ
 T.eng氏(音響エンジニア/
     趣味はオーディオ、パソコン製作、鉄道 etc.)
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 今回は「ショパン弾き」として世界に影響を与えた二人の奏者を取り上げます。一人はカザルス・トリオの一員だったアルフレッド・コルトー。もう一人は巨匠ルービンシュタインが絶賛したマウリツィオ・ポリーニ。まるで正反対の演奏スタイルの二人を紹介していきます。ルービンシュタインは次回お届けします。(T.eng氏)

モノクロ・ショパン コルトー
 コルトーは1877年にフランス人の父とスイス人の母との間に、スイスで生まれ、2人の姉から指導を受け、パリ音楽院に進むなど英才教育を受けますが、落第したり、サン・サーンスから酷評を受けたりしました。ワーグナーに傾倒してバイロイト音楽祭の助手をつとめ、1902年から指揮者としても活動、ワーグナーの「神々の黄昏」をフランスで初演しました。1905年にはヴァイオリニストのジャック・テイボー、チェリストのパブロ・カザルスとカザルストリオを結成し、この三重奏団は名演中の名演と言われましたが、ティボーと仲が悪くなり解散してしまいます。
 第一次世界大戦後はソリストとして各地で名演を重ねます。1907年にパリ音楽院教授になりますが、より良い音楽教育のために自らエコールノルマル音楽院を作り教育活動を行いました。第二次世界大戦ではナチス寄りのヴィシー政権と関わり、ナチスに批判的だったカザルスとも決裂、戦後は1年間活動禁止となります。1952年に来日して、ベートーベンのピアノソナタ「月光」を演奏を行い、1962年にローザンヌで死去しました。コルトーのレパートリーはショパン、シューマンなどのロマン派やドビュッシーなどフランス系が中心でした。
 1930年代に使用されたSP盤のレコードでは片面が5分しかなく、30分の曲を納めるには裏と表で10分として、3枚も必要となり大曲の録音は困難でしたが、当時録音されたドビュッシーやショパンの曲はとても瑞々しい演奏です。コルトーの演奏のテンポや間の取り方はコルトーならではものでした。エコールノルマルのマスタークラスでは、詩人が朗読するように詩的なニュアンスに富んだ指導を行いました。門下生たちは、非常に癖の強い尖った強者が多く、コルトーがそれぞれの個性を引き出す指導をしたことが伺えます。

 

ハイビジョン・ショパン ポリーニ

 ポリーニは1942年にイタリアのミラノに生まれ、5歳からピアノを習い始め、1957年に15歳でジュネーブ国際コンクール第2位、1960年には18歳でショパン国際ピアノコンクールで優勝し、審査委員長のルービンシュタインが「今ここにいる審査員の中で、彼よりうまく弾けるものがいるだろうか」と言わしめました。その後、すぐにメジャーデビューはせず、演奏活動も国内だけで行い、さらに勉強が必要と考えたのか、ミラノ大学で物理を学んだりしていました。
 1968年にようやくプロデビューをしてドイツグラモフォンと契約、中でもショパンのエチュードは爆発的に売れ、音楽評論家の吉田秀和の「これ以上、何をお望みですか」という名文句が生まれました。1970年に初来日してベートーベンやショパンを演奏し高い評価を得ます。1987年にはカール・ベームの指揮するウィーンフィルとベートーベンのピアノ協奏曲を共演、1995年には連続演奏会「ポリーニ・プロジェクト」を始め、年齢を重ねても、その創作意欲は衰えを知りません。ポリーニの演奏は超客観的で、どんな弱音も正確に表現し、非常に説得力のあるものでした。その完璧さゆえにサイボーグとさえ比喩されますが、結局ここに帰ってくる場所なのです。
参加された方の感想
 2時限の成田喜一郎さんのワーク「想像力って何だろう?」にご家族で参加されていた鈴木智美さんが、続いて音楽にもご参加いただきました。
●残念ながら他の家族は用事でいなくなってしまいましたが、私は音楽が好きなので参加しました。普段、クラシックを聴くことは少ないんですが、今回、二人のピアニストを聴き比べて、ピアニストによって、演奏がこんなに違うんだということがわかってとても新鮮でした。普段はジャズピアノ、特にオスカー・ピーターソンが好きでよく聴いています。そちらも楽しみにしています。
T.eng氏:私は仕事でジャズも取り扱っていますが、かのオスカー・ピーターソンが「これはやばい!」と言ったアート・テイタムも聴いてください。彼は本当にすごいですよ。
T.eng氏の感想
●次回はルービンシュタインとツィマーマンを取り上げます。