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874 多田図尋常小学校の人々「次回はクナッパーツブッシュとショルティを取り上げます」


●3限目 音楽
 「Coffee Break Music In Tadaz」
  本日のバリスタの気まぐれブレンド

    「盲目の奏者たち

             〜ヴァルヒャと辻井伸行
 T.eng氏(音響エンジニア
     /趣味はオーディオ、パソコン製作、鉄道 etc.)

 音楽の世界にはスティーヴィー・ワンダーやレイ・チャールズなど目の不自由なアーティストが多数存在します。もちろんクラシック界にも第一線で活躍する演奏家がいます。最初に取り上げるのはオルガニストとしての伝説、ヘルムート・ヴァルヒャ。もう一人は日本のピアノ界をけん引する一人、辻井伸行。この二人に共通しているのは「ハンディキャップを乗り越える」のではなく、それを微塵も意識させない音楽性をもっていたことです。

 

オルガニストとしての伝説

 ヘルムート・ヴァルヒャは1907年にライプツィヒで生まれ、1歳で受けた天然痘の予防接種の後遺症で視力を失いかけますが、両親があらゆる治療を試みて、わずかながら視力を回復します。姉から楽譜の読み方を習いオルガンを始めます。12歳の時に、彼の演奏を聴いたライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコントラバス奏者が、アルトゥール・ニキシュのところに連れて行ったところ、正規の音楽を勧められます。1年間、コントラバス奏者にピアノを習い、1922年にライプツィヒ音楽院に入り、ギュンター・ラミンに師事します。慢性の角膜炎のために16歳で失明するのですが、家族のサポートのもと演奏活動を続けます。1924年にライプツィヒ・聖アンドレ教会で開いたオルガンのコンサートでデビューします。その時、同情を避けるために新聞には盲目のことは書かないように依頼したのです。1929年にフランクフルトのフリーデン教会のオルガニストになり、1933年にはフランクフルト高等音楽学校のオルガン科の教師になります。1944年にはフランクフルトのドライケーニゲ教会のオルガニストに就任。一度モノラルで録音した「バッハ・オルガン作品全集」を、録音技術の進化した後年、ステレオで再度録音し、その業績は高く評価されました。さらにはバッハの鍵盤作品の楽譜の改訂をしたり、オルガンの作曲の教師として講義や模範演奏を行ないました。1950年にはゲッティンゲンのバッハ没後200年記念音楽祭でオルガンとチェンバロを演奏。1977年に高齢と健康上の理由でのため引退し、1991年に死去しました。

 

日本のピアノ界をけん引するピアニスト

 一方、1988年に東京都で生まれた辻井伸行は、出生時に眼球が成長しない小眼球症という障害を負っていましたが、幼い頃から音楽に興味を持ち、2歳で母親の鼻歌をおもちゃのピアノで弾いていました。 7歳でヘレン・ケラー記念音楽コンクールのピアノの部で第一位を受賞して、10歳の時に三枝成彰スペシャルコンサートで、大阪センチュリー交響楽団と共演してデビューしました。1999年には全国PTNAピアノコンペティションD級で金賞と審査員特別賞を受賞。 2000年に12歳でサントリーホールでソロ・リサイタルを開き、2001年にもソロ・リサイタルを行い、神戸音楽祭にも参加します。

 

2002年に東京オペラシティ・コンサートでは東京交響楽団と、モーツァルトとショパンのピアノ協奏曲を演奏し大成功を納めます。2005年にはショパンコンクールに出場して予選敗退しましたが、10月に行われたショパン国際ピアノコンクールではポーランド批評家賞を受賞しました。2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで、日本人として初優勝し、同時にビヴァリー・テイラー・スミス賞も受賞しました。またファーストアルバム「debut」がオリコンで2位となり、2002年の小澤征爾のアルバムと並んでクラシックのアルバムとして最高位となりました。2020年のコロナ禍では多くのコンサートが中止になりましたが、オンラインで有料コンサートを行いました。ファーストアルバムdebut」の中の「水の戯れ」を聴くと、彼のピュアで初々しい演奏は、心の目で見ていることが伝わってきます。演奏のレパートリーはショパン、リスト、ラヴェルなどのロマン派が多いです。活動範囲は幅広く作曲も行い、テレビドラマや映画の音楽を担当したりしています。新しい曲に取り組むときは楽譜が使えないので、まず左右のパートを別々に弾いてもらい、それを聴いて耳で覚えていきます。楽譜で覚えるのとは全く違う世界が見えているわけです。そのためペダルの動きや息遣い、作品のリズムなどをとても厳格に捉えています。

 

鈴木智美さんの感想です。

 私は「水の戯れ」が好きで、他のピアニストの演奏を聴いたことがありますが、辻井さんの演奏は初めて聴きました。前回参加させていただいた10月1日の回のときと同様、演奏者が違うとこうも曲のもつイメージが変わるのか、と唸らずにはいられませんでした。しかも今回は“見えないからこそ「視えている音の世界」に生きる”演奏者たちの奏でる音色。演奏技術もさることながら音への研ぎ澄まされた感覚を学ぶことができたように思います。音楽素人の私でも音の違いにすんなりと気がつけるのはT.engさんの選曲の素晴らしさなのは言うまでもなく…
井上清三さんの音源を聴いた感想です。
 井上です。昼飯を食べた後、聴きました。ちょっと眠かった。先ず、高度なクラシックミュージックのラジオ専門チャンネルを聴いているような感じがしました。2人の音楽家について曲を入れながら時間内にまとめ、次回の予告をさりげなく入れ、時間制限の40分にピッタシはめるとは・・・まずこれに驚きました。この番組にかける野末さんのプロ根性ですね。もう私の数学は、グダグダだあ。まっ、それなりにおもしろいですけどね。
 辻井さんの「水の戯れ」、水を感じました。他の演奏者でもそうなんでしょうか?ヴァルヒャの「紹介文に全盲とはいれない」のこと、「俺の音をなんの偏見も入れないで聴いてくれ」というプロ根性を感じました。
T.eng氏の感想です。
次回はクナッパーツブッシュとショルティを取り上げます。
校長からお詫び

今回、T.engさんが外部から参加のため、事前に送られてきた音声データを校長が共有画面で流したのですが、途中、音声が切れてしまい大変ご迷惑をおかけしました。お詫びいたします。