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883 多田図尋常小学校の人々「zoomにはこんな使い方もあると気がつかされました」


●2限目 社会
「命をつなぐ救急法」
〜40年、救急法に携わって見えてきたもの〜
  宇田川規夫さん(国際救急法研究所 理事長
       /ルーツミュージックが大好き)
 私(中城)が宇田川さんと出会ったのは30年近く前です。当時、私が障害を持つ長男の高校入学のために参加していた団体に宇田川さんも顔を出されていました。先日、久しぶりにお会いしたので近況を伺うと、障害児のためのスペースの運営以外にも様々な活動をされていて、中でも理事長をされている国際救急法研究所では救急法の指導で全国を飛び回っているとのことでした。そこで多田図尋常小学校にて、救急法についてのお話をしていただくことをお願いしました。
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●事前の事故防止が
     救急法の大きな目的
 おはようございます。ただいま校長の中城さんからご紹介を受けた国際救急法研究所の宇田川です。
実は日本で救急法が本格的に始まったのは戦後アメリカのGHQの命令からなんです。命令を受けた日本赤十字社の小森栄一、彼は私の義父ですが、アメリカに留学して最新の救急法についてみっちり学び、それを元に日本全国で講習を始めたのです。当初は日赤中心で、さらに消防でもやり始めたのですが、1970年に企業活動として普及啓蒙を行おうと小森が立ち上げたのが国際救急法研究所です。

 救急法の目的は、上手に怪我の手当ができるとか、他の人を助けることができるとか色々考えられますが、最大の目的は怪我や病気にならないための方法を知ることなんですね。自己管理と事故防止思想です。これまでは救急法とは怪我や病気が発生した事後の対応だと考えられていますが、この研究所でお伝えしているのは事前の事故防止の大切さなんです。

 

 

●正しい検温の仕方
 この写真を見てください。子どもが脇の下に体温計を挟んで測っていますが、先端が下に向いています。体温というは血液の温度ですから、体温計のセンサー部分は、脇でも動脈に最も近いところを測らないといけない。体温計を上に向けてセンサー部が動脈に当たるように測る。そんな基本的なことが意外と知られていないんです。

 

●自転車にはヘルメット着用で
 次の写真はお母さんやお父さんが自転車の前後に子どもを乗せて走っています。何か気がついたことがありますか?
そうです。子どもたちはヘルメットをかぶっているのに、大人はヘルメットしていません。万一、事故で大人が大怪我をして意識不明になったとすると、誰が子どもたちを助けるのでしょうか。大人も絶対にヘルメットをしてください。道路交通法でも自動車事故の時には安全確保と怪我人の救護をすることが定められていますが、実際は119番に電話して、ほぼ見守るだけになっています。止血や消毒をしようにも道具もありませんから。私は自動車に救急キットを積んでいただきたいと訴えています。一部の海外メーカーでは標準装備になっていますが、国内メーカーの方に伺っても儲けや売り上げに直結しないと難しいそうです。

 

●ポテトチップには要注意
 この写真はポテトチップです。食べ始めると止まらず、気がついたら一袋食べていたこともあると思います。でもこの中に油分がどれだけ入っていると思いますか。裏の表示を見るとなんと20グラムも入っています。油を20グラム飲むことはなかなかできませんが、スナックの形になると知らずに食べてしまっているのです。

 

 

●安全に対する意識の違い
 この壮大な風景は有名なナイアガラの滝の写真です。よく見ると柵の高さがかなり低く、簡単に乗り越えられそうです。実は2011年に日本の女性がここから滝壺に転落して行方不明になってしまいました。おそらく素敵な写真を撮ろうと軽い気持ちで柵から出て戻ろうとして転落したのでしょう。日本ならこんなに危険な場所ならもっと高い頑丈な柵を作ると思うのですが、アメリカやカナダでは、危険に対してはあくまで一人一人の自己責任という態度のようです。

 

 

●カップラーメンに潜む危険
 次の写真、これはカップラーメンにお湯を注いだあと、3分間、フィルムの蓋を抑えるために大きなヤカンを乗せている写真です。これは実際に起きた状況を私が再現したものですが、こんな不安定な状態では何かの拍子で手前に倒れることもあります。もし熱湯や熱い麺が剥き出しの腕や足にかぶって、それを咄嗟に払い退けようとするとします。すると皮膚ごと剥けてしまう場合だってあります。特に麺類は粘性がある分、皮膚にペタッと張り付きやすいのです。こういう日常の動作にこそ注意を払っていただきたいと思います。

 

 

●熱中症対策では正しい飲み物を
 次は熱中症対策の飲み物についてお話します。大量に汗をかくことは、体の水分を一気に失うことで、ある意味、出血にも等しいわけです。ところでみなさんは熱中症を疑った時に、この4種の中で何を飲みますか。
①冷水②スポーツドリンク③OS-1④スポーツドリンクを2倍に希釈⑤冷たい麦茶。
熱中症の判断ですが、よく宣伝されているOS-1が美味しいと感じたら、それは熱中症がだいぶ進行している状態です。体が必要としているのです。私も健康時に飲んでみましたがとてもたくさんは飲めません。健康体は必要としていないのですね。スポーツドリンクはかなりたくさんの砂糖が含まれています。さらに美味しく感じるさせるために酸味成分も入っています。この砂糖と酸味料のため、日常に飲み続けると虫歯になる可能性もあります。今回の選択肢にはありませんが、緑茶やコーヒーやビールには強い利尿作用があり水分として摂取してもすぐ排出されてしまいます。私自身は冷たい水か、麦茶を飲んでいます。最近は小学校で熱中症予防として子どもが水筒を持っていきます。学校によっては水以外の飲み物、スポーツドリンクなどを認めているそうですが、これらの要素を考えて持っていきたいと思います。

 

 

●怪我の対応

 次は怪我をした時の対応です。こんな指先の切り傷の場合はどう対応しますか?まず血液をきれいに拭き取ったら救急絆創膏を強めに巻いてください。圧力で止血します。最近の子どもたちの怪我をしたときの対応に首を傾げたくなることがあります。鼻血が出た時は、私たちの時代は鼻を押さえますが、最近は、垂れる鼻血をテッシュか何かで受け止めながらくるそうです。手に切り傷を負った時も、私たちは手を心臓より高くしますが、今の子どもたちは手を下にぶら下げて、血をたらたら垂らしながら保健室にくるそうです。また擦過傷などの時の対応ですが、まず水道で砂やゴミを洗い流すこと。痛いですが、これが極めて効果的な消毒法なんです。

 

 

●自分の身体に興味を持つ
 ここまで駆け足でお話をしましたが、とにかく自分の身体に興味を持ってください。自分の体です。医者に任せればいいと丸投げをしないでください。それをちょっと症状が出たからと無闇やたらに薬を使わないことです。反対に「放っておけば治る」と過剰に「自然」を信奉しないことも大切です。とにかく自分の身体の仕組みについて最低限の知識を持つことで、自分の状態を正しく把握することが大切です。
ありがとうございました。
鯨井誠一さんの感想
 宇多川先生による救急法は僕らも馴染みのある分野だと思っておりましたが、想像以上に概念が深く、大怪我を予防するためのものとして捉えていたと言うのは驚きました!
校長の感想
 昔、消防署の救急法の講習で人口呼吸や、AEDの使い方を習ったことがあり、今回もそのお話を伺うつもりでしたが、宇田川さんから「救急法は事前の事故防止」と伺い、まさに目から鱗でした。我が家の自動車にも救急キットを備えなければと思いました。また高齢者の私は家族から運転は控えるようにと言われていますが、これこそ事前の事故防止かもしれません。
宇田川さんの感想
 これまでzoomの使い方は講義か会議でしたが、尋常小学校に参加して、こんな使い方もあるんだと気がつかされました。こんな形で街の学校を簡単に開校できますね。