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894 多田図尋常小学校の人々「楽しく、しめ縄づくりを続けて行きたいと思います」

●1限目 社会
      「なわの会」
 〜1年かけて取り組んだ、
       しめ縄づくりの軌跡〜
   寺田有梨さん(植物雑貨と自家焙煎珈琲豆
   「Hütte 花とコーヒー」/趣味:草花あそび)
 昨年11月に大倉山で開かれたオリジナリティあふれる手作り「しめ縄」の展示会で寺田有梨さんと出会いました。寺田さんはネット情報を頼りに「しめ縄」を作ったものの、キチンとやらなきゃとモヤモヤしてしまいました。その時、参加者自らが、しめ縄の勉強をしながら作っていく「なわの会」のお誘いを受けて即参加したそうです。この会は集まった20人弱で昨年の春にスタート。その1年間の「なわの会」の活動を寺田さんにお話していただきました。
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 おはようございます。「なわの会」の寺田有梨です。私は「まちつくり会社」で、ショピングセンターの運営、開発、広報を担当しています。また趣味で始めたリースですが、現在は注文で植物雑貨を作ったり、イベント出店、ワークショップなども開いたりしています。そして2023年にはオンラインショップで、植物雑貨と自家焙煎珈琲豆を扱う「Hütte 花とコーヒー」を始めました。また植物が好きで自宅隣の公園の花壇の世話をするボランテイアグループの窓口もやっています。

⓪なわの会とは
 私は以前に、ネット情報を参考にして、しめ縄を作ってみたものの、神事に関わるものだから、もっときちんと勉強して作りたいとモヤモヤしていました。その時、知り合いの「しーちゃん」から、しめ縄の勉強会に誘われて思わず参加。「しーちゃん」は個人で活動中のフロリストで、ドイツに留学してフロリストマイスターを取得されました。実は私も1年間、ドイツにデザイン史を勉強しに留学したことがあり、仲良くさせていただいていました。
「なわの会」は「じぶんちの、しめ縄くらい自分でつくる」を目的として、SNSで参加を募ったところ大倉山周辺の会社員、主婦、カフェ店長、植物の工芸作家さんなど20人近い人が集まりました。教えてくれる講師もおらず、自分たちで様々な情報や知識やスキルを集めて持ち寄り、1年かけて学び合う、そんなスタイルです。もちろん受講料もなし、必要なのは場所代と材料費だけです。
①「しめ縄を学ぶ」
 2月に開催された1回目は①「しめ縄を学ぶ」というテーマで参加者が自己紹介と、それぞれがしめ縄について調べた成果を発表しあいました。「しめ縄」という一つのテーマですが、人によって全く異なった視点から捉えているんです。実は私自身は直前に体調を崩し、参加できなかったのが残念でした。
②「縄を綯ってみる」
 次の②「縄を綯ってみる」では実際に稲藁から縄をなってみました。私たちは全くの素人なので、一応ネットなどで下調べをしてきたのですが、実際にやってみると全然できません。後で足の親指に束ねた藁のハジを引っ掛けるとやりやすいとわかったのですが、そんなことも知らず、手で押えたり、手探りで、縄をないました。事前に藁束を水に浸しておいて、木槌で叩いて繊維を柔らかくする方法もありますが、その日は水を霧で吹いただけだったので、全然水を含まず、硬いままで色々苦労しました。写真の上が最初に作った縄で、再度挑戦したら、下のように少しは形になってきました。

 

③「デザインする」
 そして③「デザインする」。ここだけは「しーちゃん」が講師となってドイツで学んだ手法を使ったワークショップを行いました。これは自分の中から湧いてきたイメージを画用紙に描いていくのですが、スムースにイメージが浮かんで描き始める方もいれば、何も浮かばずに苦労された方もいます。これも描いているうちに、自分の中のイメージが引き出されて手が勝手に動き出したり、最初のイメージと違った形になることもあります。知らない自分との出会いという感じでした。これはおすすめワークです。
特別編 稲刈り
 次は特別編として坂梨さんの「はたけの森農場」に稲刈りに行きました。無農薬で育てた稲を鎌を使って手で刈るのです。しめ縄用として市販されている稲束と違って、実際に生えている稲のエネルギー、自然のエネルギーをダイレクトに感じることができました。私のしめ縄のイメージにも確実にエネルギーをいただきました。とてもいい経験でした。次回はぜひ田植えから関わりたいと思います。稲刈りの後、坂梨さんの依頼を受けて、田んぼで、しめ縄作りのワークショップを開催しました。皆さんの笑顔としめ縄を見てください。

 

④「しめ縄を作る」
 そして迎えた④「しめ縄を作る」。しめ縄の作り方で失敗しながら自分のものになったスキルを使って、自分で描いたデザインが具体的な形になるわけです。考えてもワクワクしますが、実際は、みなさんはとても苦労していました。まず自分のイメージ通りの形にならないし、それでもあれこれ工夫し、限られた時間の中でたいへんでした。でも誰も諦めないで、それぞれが自分のデザインの、しめ縄を作り上げました。
作品の展示会
 しめ縄作品の展示会会場は大倉山駅近くのおしゃれなブックカフェで、坂梨さんと中城さんにも来ていただきました。一番左が私の作品でイメージは鳥ですが羽ばたくのではなく、庭の木に遊びに来た小鳥のイメージです。その右が竹の工芸作家さんの竹を使った作品で、中心から丸く放射する形になっています。そして天井から下がっている大きいのが「しーちゃん」の作品で、龍が飛び回っていますね。それもみんなを連れて行ってくれる感じです。これらの作品を見ている坂梨さんが面白かったです。まるで自分の赤ちゃんを見ているような視線でした。
「なわの会」の1年を振り返って
「なわの会」を1年間を通してやり終えたのですが、とにかく、しめ縄への理解が深まって、以前のように迷いながらではなく自信を持って作れるようになったことが大きいですね。モヤモヤがなくなりました。また気軽に縄をなうことができ、コースターのような縄細工も作りたいです。何より稲作に関わりたいと思うと、ご飯が美味しく感じられるのが不思議でした。また参加メンバーの方とも知り合いになれたことも嬉しいし、はたけのもり農場の坂梨さんとも出会うことができました。そう言えば、伊豆の農家出身の祖母に「なわの会」の話をすると「私は田舎で毎日のように縄をなっていたの。草鞋も痛んだら自分で新しく作ったし」と色々な話をしてくれ、縄の綯い方も教えてくれました。知らなかった祖母の新しい面に出会った感じでした。
 ところで「なわの会」は1年限りで、もうやりません。理由は、ワークは大体1日で終わるのですが「なわの会」はなんと1年。活動もけっこうハードでした。今後は、単発の「しめ縄作りワークショップ」はやりたいと思っています。また、そのうち何か新しいことを始めるかもしれません。

 

 

坂梨さんの感想
 脱穀した稲わらは一部は田んぼにすき込みますが、残った稲藁の処理に困っていました。その時「しーちゃん」さんが「稲藁を使わせくれないか」と連絡をくれたので、嬉しかったです。ありがとうございます。そんな「なわの会」が1年で辞めると聞いてびっくりしました。今後とも田植、稲刈りなどの田圃イベントの連絡をします。何かの形で関わり続けさせてください。

 

T.eng氏の感想
 どの世界でも一度、真にクリエイティブなことに関わると、そこから抜けようと思っても、その体験が忘れられず戻って来てしまう。それを「クリエイティブの沼」と言います。ようこそ「クリエイティブの沼」へ。

 

寺田さんの感想

 貴重な振り返りの機会を頂きありがとうございました。学びの多い一年だったことを、より深く実感することが出来ました。

今年は田植えから参加予定です!今後も楽しくしめ縄づくりを続けて行きたいと思います。