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954 多田図尋常小学校の人々「人のお役に立てたと実感できた時が嬉しいです」


●1限目(9:30~10:10) 社会

「作る、造る、創る」
 〜デジタルからアナログまで、つくる面白さ〜
   松本真司さん(工業デザイナー)

 坂梨勝一さんの稲刈りの会でお会いした松本真司さん。お仕事はプロダクトデザイナーで25年近く、人と機械をつなぐGUI(タッチパネルなどで操作する方法)などのデザインに関わってきたそうです。また2年前よりワラーチというサンダルを作り始めワークショップも行っています。
 デジタル最先端の製品デザインと超アナログのワラーチ作り。松本さんの中ではこの二つの「つくる」面白さは同じものだとか。松本さんにとっての「つくる」面白さを探っていきたいと思います。
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工業デザインとは
 私は広島出身で現在、横浜で妻と娘の3人で住んでいます。仕事は新横浜の「ホロンクリエイト」というデザイン会社で工業デザイナーをやっています。週末にゴム底サンダル「ワラーチ」を作ったり、ドローイングや、坂梨さんの田圃で田植えや稲刈りに参加したり、また妙蓮寺の古民家管理のコミュニティにも参加しています。
 最初に工業デザインについて簡単に説明します。工業デザインとは皆さんの使う民生用の製品から産業機械などが対象ですが、色や形だけでなく使いやすさや、使っている人が心地よい製品にすることです。私の会社はデザインという立場から製品の構想、企画などの上流から、設計、製造、金型設計や、製品の販売、サービスなどの下流までをサポートしています。具体的にいうと医療機器、産業機械、民生用の製品などに関わっています。

 

UX・UIについて
次にUX・UIのデザインをお見せしたいのですが、製品化されたデザインの表示など諸権利は基本的にご依頼者に属します。したがってブログでは掲載できませんが少し説明します。
携帯電話やスマホ画面
 まずはお馴染みの携帯電話のやスマホの画面のデザインです。ここでは見やすさ以上に使いやすさが大事ですが、それらをメモリ容量の制限の中で、徹底的に追求することが求められます。
ドローンのルート管理画面
次はドローンなどで使用するルート管理の画面です。ドローンは将来的に民生用として撮影や、農薬散布、小荷物の配送など様々な利用が期待されます。そのためのドローン移動ルートの設定、実際の移動状況の把握などを管理するコントローラの表示などにも関わっています。
車内の案内表示
 これは皆さんも電車でみる車内の案内表示トレインビューです。まずは基本となる標準の表示があり、状況に合わせて情報を追加したり、レイアウトも見やすく変更して行きます。使用言葉も多言語となり、また混み合ったり、揺れたりする車内でも見やすいような表示やさらには表示時間など様々な配慮が必要です。
舞台照明のコントロール盤
これは舞台照明のコントロール盤です。昔は照明はアナログな電球を使っていましたが、現在はLEDに変わって、さまざまな機能が加わっています。照明のタイミング、色温度、照度の変化などコンピューター制御するので、一層、見やすさ使いやすさが要求されます。
ポータブル医療機器
この可愛い機械は、ある病院と一緒に開発したポータブル医療機器です。一つの画面に心電図や酸素濃度など多くの医療情報を表示する必要があり、まさに命とも関わっています、その分、それぞれの情報が間違いなく捉えられるような、見やすさと使いやすさを追求しています。この機械は表示だけでなく製品全体のデザインも行いました。可愛いでしょ。
看護師用英会話の学習アプリと教材
そして最後は看護師用の英会話の学習アプリと教材です。医療系で使われる英語は特殊ですが、そのための学習ソフトがありませんでした。そこで私たちは専門家と協力しながらこのアプリと教材を製作しました。

 

ワラーチとは
 次にゴム底のサンダル「ワラーチ」についてお話します。これはメキシコの先住民族が古タイヤを再利用したもので「走れるサンダル」とも言われています。
 このサンダルを履いてみるととても具合がいいと評判となり広がりました。現在はメーカー製品もあり、また構造が簡単なので自作する方も結構います。さすがに古タイヤは使いずらいので、ワラーチ専用にビブラム社のゴムソールが販売されており、それにアウトドア用のひもを使って作られています。

 

ワラーチの特徴とその効果
 ワラーチの特徴は、足の形に切り出したソールに紐を通しただけの簡単な構造にあります。ソールも薄いため裸足で歩いているような感覚です。そのため蒸れることはありません。また普通の靴とくらべても驚くほど疲れないのです。靴を履いている時と足の使い方が全く違います。足が地面に着地するときに、衝撃を和らげるために体全体を意識するようになって本来の足の機能が戻ってきます。同時に体幹が鍛えられます。足の指も大地を掴むような動きとなっていきます。歩いてみるとわかるのですが自然に靴歩行より足の回転が速くなり、体重移動の動作から、自分自身の身体感覚自体が養われていきます。他に冷え性、外反母趾、魚の目の改善にも有効です。これらはある意味、文明病なんだと思います。

 

 

ワラーチとの出会い
私のワラーチとの出会いは2021年頃にSNSで知り、近所で履いている人を見かけるようになり、気になってきました。そんな時、大和市のパン屋さんのログハウス建てのお手伝いでご一緒した方がワラーチを自作されていて、さらに興味が湧き、ネットの自作記事を参考にしながら、材料を集めて作り始め、改良を重ねて家族で愛用するようになりました。

 

 

翌年の2022年にログハウスを建てたパン屋さん「パン工房ふらんす」から、そこでワラーチ作りのワークショップの提案があり、手探りで開催しました。評判も良く、その後もパン屋さんのイベントで出店するようになりました。それ以来、ご希望に応じる形で30回ワークショップを開催、注文にも応じています。

 

私が作ったワラーチです。
これがビブラムソールを使って作ったワラーチです。

 

厚底タイプもあります。

 

子ども用にビーチサンダルのソールを使ったものも作ってみました。

ドローイングもやります。
もう一つの趣味ドローイングですが、「パン工房ふらんす」さんに依頼されてログハウスのガラス扉に描いたものです。

 

以上です。
絵ばかり描いていた子どもでした。
中城:お話を伺うと工業デザインからワラーチ作りまで、本当にいろいろなことをされているのですが、そもそも松本さんはどんなどんな子どもだったのですか?
松本さん:子どもの頃から絵を描くことが大好きで、アニメや漫画を描いてばかりいました。もちろん初めから工業デザインを目指していたわけではありませんが、絵が好きだったので美術大学を狙って専門の予備校にも通い美大に入ることができました。
 大学では初めからコース別に分ける感じではなく、なんでも好きなことをやらせてもらいました。色々やっているうちに油絵や陶芸などよりも工芸、プロダクト・デザインなどに関心が高まり、最終的には、より多くの人に影響を与えられるプロダクト・デザインを選んで大学院まで進んで卒業しました。卒業後の進路ですが、デザインアート系にはあまり就職先がありません。大学の先生に大手企業を紹介されたりする人もいましたが、私はたまたま美術系の雑誌に、横浜のデザイン事務所の募集を見て応募したのです。運よく採用されて今に至っています。
 会社は当時も現在も10名前後の規模です。入社するとチームに配属されて先輩と一緒に仕事をしながらプログラミングなども覚えていきました。この会社は上下関係がいい具合にゆるく、アイデア出しの会議でも経験の有無に関係なく、面白いものを出すと評価されます。その場で浮かんだアイデアを口頭で説明することもあるし、事前に練り込んだアイデアを資料を使ってプレゼンすることもあります。今まで民生用機器から産業機械、医療機器まで多様な製品に関わってきましたが、どちらかというと私は流行などに左右される民生機器より、より黒子的な産業機械や医療機器などの方が好きです。地味ですが、製品に組み込まれながら、みんなのお役に立てている感じがいいんです。スマホのアプリなどは比較的誰でも作りやすいですがね。私が関わった中で変わったものとして、例えば東京ドームのバックスクリーンにあるスコアボードの表示とか、日産スタジアム関係にも関わっています。オーディオ製品ではアンプやCDプレイヤのディスプレーなどのグラフィックもやらせていただきました。あれは使用できるメモリー量が小さくて、思った表示スピードが出なかったりの苦労もありました。

 

農作業用のワラーチはありますか
坂梨さん:私は作ったワラーチを車にも乗せているのですが、残念ながら農作業には使えないのですね。メキシコの方達はどうしていたのですか。
松本さん:砂や泥があるとワラーチの先端がパカパカ開いてしまうんですね。先日はヨットをやる方からデッキの上で使えないかとか、泳げるワラーチとか、いろいろなご依頼があります。坂梨さんの農作業用も含めて、さまざまなご要望に応えられるように考えてみます。今しばらくお待ちください。

 

住むとすればバリ島なんかはいいですね               (放課後)
中城:松本さん、バリ島からの帰国直後にありがとうございました。バリ島はいかがでしたか。
松本さん:今回はツアーではなく、バリの西の方に在住の私の知り合いがいて、遊びに来ないかと誘われて娘と行ってきました。とても気持ちの良い旅でした。実は先日、仕事でベトナムに出張したばかりなんです。今回は、なんとか1週間お休みをとることができ、日本とは全く異なった環境に身を置いて、とても新鮮な感じがしました。もっともバリでスマホ用のシムを購入して入れておいたので少し仕事の連絡が入ってきましたが。
 今回は娘にとって初めての海外旅行でしたが、とても楽しかったようで、また行きたいと言っていました。食事は知人のお宅でご馳走になったり、おすすめのレストランでいただいたりしました。有名なナシゴレンなど多少辛かったりしたのですが、それも私の好みで、とても美味しかったです。特に新鮮な果物が豊富で堪能しました。今は観光シーズンでもある乾季が終わり、雨季に入ったばかりでした。バリはサーフィンにピッタリの波があり、それを目当ての外国人もいたのですが、それほど混んでいることはなかったです。飛行機はバリ直通のガルーダ航空を使いました。行きは8時間くらいかかります。ガルーダの機内食はエコノミーでしたが、ごくごく普通でしたよ。
 私はヨーロッパも含めて色々いきましたが、ハワイやバリのようなのんびりしたところが好きです。住むとすればバリなんかは最高ですね。
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もっと専門的な工業デザインの
 お話を伺いたいです(T.eng氏の感想)
 私は2018年までは毎年海外に出かけていました。住むとするとオーストリアは音楽を楽しむのはいいのですが水がちょっと重すぎる感じですね。ストラスブールも捨てがたい。アルザスのワインは美味しいし、食べ物で言えばイタリアは欠かせない。選ぶのは難しいですね。また最初の工業デザインのお話ですが、次回、工業デザインを取り上げるときはもっと専門的でもOKです。

 

作る楽しさが浮かんできました
         (中城の感想)
 前半の工業デザインのお話では松本さんが本当に多くの分野の製品に関わっておられるので改めてびっくりしました。またワラーチ作りは松本さんが純粋に楽しそうに作られている様子が伝わってきました。両方を通して松本さんの「ものつくり」の姿勢も伺えてなかなか濃密な楽しい時間を味わうことができました。また放課後のバリ旅行のお話も、面白かったです。インドネシアの風が吹いているようでした。

 

良い経験になりました松本さんの感想)
 自身の経歴や活動をご紹介する機会はあまり無かったので、振り返るきっかけになり良い経験になりました。
ありがとうございます。