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☆NEW 最新!! 957 多田図尋常小学校の人々「関わった人たちが少しでも幸せになることが大切」


「初めから常設の子育て支援

       施設を作るつもりでした」
 
    ~出会いは子育て情報マップ作りから~
    原美紀さん(NPO法人「びーのびーの」副理事長)
 
 
 先日、スタッフの江口知佳さんに子育て支援拠点「どろっぷ」を紹介していただき、この素敵なスペースが生まれた経緯を知りたくなりました。そこで運営するNPO法人「びーのびーの」副理事長の原美紀さんに相談したところ授業していただけることになりました。
 原さんと理事長の奥山千鶴子さん出会ったのが20数年前の港北区の子育て情報マップ作りプロジェクト。すぐに二人の間で子育て支援活動の構想が生まれました。それも場所を借りながらではなく、きちんとした組織で運営する常設施設。そのためNPO法人作りからスタートしたそうです。印象に残った言葉が「いわゆる仲良しサークル的にするつもりはありませんでした」。この高い意識と固い決意はどこから生まれたのでしょうか。そのあたりからお話を伺いたいと思います。
 
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「びーのびーの」とは?
 「びーのびーの」は2000年に菊名商店街の空き店舗(菊名駅から徒歩2分)で0歳から3歳児とお母さんたちが集まれる「おやこの広場びーのびーの」としてスタートしました。現在は港北区に子育て支援拠点「どろっぷ」をはじめ認可保育園や地域交流スペースなど常設の場として7拠点があります。これらの施設の運営以外に、出版やチラシ作成、インターネット関連、また企業からのモニター依頼の案件や、フィールド調査やコンサルティング、さらには情報発信なども行って事業収益も得ています。現在、有償で働いているスタッフや、ヘルパーなど含めて200人くらいの方々が関わっています。

「びーのびーの」の成り立ちは?
中城:「びーのびーの」について伺い、その多岐にわたる活動にびっくりしました。実は私の障害を持っている長男が幼児の時に自主訓練会に参加して、その運営にも少し関わっていたのですが常設施設とか法人組織という発想はありませんでした。そんな発想をする原さんとは、どんなお子さんだったのですか?子どもの時から社会に関心があったのですか?
原さん:いえいえ小学校の夏休みの課題で沖縄、広島を調べようとしたこともありますが、ごく普通の子どもだったと思っています。そもそも「びーのびーの」を作ったきっかけは港北区の子育て情報マップ作りで出会った理事長の奥山千鶴子との出会いだったのです。児童館のない横浜で子育て支援の何かができないかと話し合ったのです。ちょうどNHKで「0123吉祥寺」という親子を支援する活動が紹介されていました。廃園となった幼稚園の跡地利用として子育て支援施設に転用の動きがあり、その流れで市民中心の武蔵野子ども協会が生まれました。そこでは住民向けにワークショップなどを行い、施設の運営も委託されたのです。私たちはこの動きに大きな刺激を受けました。
 当時、横浜では保育園にも幼稚園にも行っていない子どもとお母さんを受け入れているところは、小さな子育てサークル以外はありませんでした。多くの子育てサークルは月に1回、地区センターなどの公共施設を借りて細々と運営していました。施設からは走り回る子どもが障子を破らないかと注意されたり、他の利用者にうるさいと煙たがられたり、施設が抽選で外れて借りれなかったりと苦労の連続でした。そこで私たちはもっと頻繁にもっと自由に活動ができる常設のスペースの確保を目指しました。本当は家一軒丸ごと借りたかったのですが見つからず、ようやく港北区の友人から紹介されたのが、菊名の空き店舗だったのです。そこで仲間に呼びかけて子育て支援の活動団体を立ち上げました。発起集会には「0123吉祥寺」の方に基調講演をお願いして、活動の実情についてお話いただきました。
 ちょうど介護保険制度が始まったばかりで、介護を担う多くの団体がNPO法人の認可をとって活動していました。私たちも施設を借りるにあたって任意のグループよりも、きちっとした組織をと考えて、介護団体の方達に申請書類の作成方法を教えていただいたりして1999年にNPO法人の認可申請を行ないました。幸い翌年に認可が降りました。NPO法人の役員には町内会など地域の方々、福祉、子育ての専門家の方や申請でお世話になった方々にも入っていただきました。
 元々、私や理事長の奥山は母親であっても子育てのプロではありません。奥山は国際会議のプロデュース、私は出版流通関係に関わっていて、二人とも直接育児教育には関わってきませんでした。
 幸い私たちの周りには多様な方々が集まりました。自宅を開放して絵本の読み聞かせの活動をされてきた方や、元保育士などの方もいました。お母さんたちも多様で、子育てが大好きな方もいれば、子育ては苦手だけどデスクワークは得意だったり、それぞれの得意技を提供しながらのスタートでした。

オープンしてからが大変でした
中城:実際にオープンしてどうでしたか?
原さん: NPO法人化して空き店舗で親子の広場を始めたのですが、色々と大変でした。運営資金、特に店舗の賃貸料を捻出が大変でした。現在「どろっぷ」の利用料金は無料ですが、当時は一回500円などの会費をいただいていました。その他にさまざまなところを回って寄付を募ったり助成金を申請したりしました。いろいろな企業も回り、木のおもちゃや優良おもちゃなど、さまざまなものを提供してもらうこともありました。その時も「あれは宣伝だ」とか「裏で結びついている」などと勘繰られないようにかなり気を使いました。保育に対してストイックに追求するスタッフもいますから。企業から、お母さんたちのモニター調査の依頼を受けることがありますが、お母さんたちではなく、なるべく友人に声がけしながら対応するようにしていました。

何をきっかけに事業が始まるのですか? 
中城:「びーのびーの」の活動は子育て支援だけでなく、チラシ、パンフ、ネットなどを使った情報発信、コンサルティングまで多岐に渡っているのですが、これらの展開は、お母さんたちの実情を見て、そのニーズを汲み取って行った結果なのですか。
 
原さん:私たちは、あらかじめニーズに対応しようという形は取っていません。ニーズを追っていると間に合いませんし。どちらかというと仮説です。目の前の現状や問題を見て仮説を立てるのです。それをさまざまな取り組みで実証していく感じです。問題の背景を考える、つまり見えない部分を可視化していくわけです。その上で社会に対しても、さまざまな提案をしたりしています。このやり方はコンサルを依頼された時に大いに役立っています。あまりやりすぎると行政から嫌がられたりもしますが。でも考えると私たちの活動は至って普通だと思っています。不利益を受けて暮らされている方、また差別されているのを見ると怒りも感じますし、放って置けなくなるんです。いわばお節介なんですね。
  私たちの活動を仲間内や内輪だけにしたくないし、多くの方を巻き込んで行きたいのです。それは規模を大きくするのではなく、私たちの活動を参考にして、各地で広がってくれるといいなと思います。そこから生まれてくるものもあります。私たちの活動も家族が次第に増えてきたという感じかもしれません。だからこそ、そこに関わっている人たちの幸せを優先していきたいのです。

「びーのびーの」が大事にしていること
中城:これまでの活動を通して大事にしていることや、絶対に譲れないようなことはありますか?
原さん:ある時、行政が子ども向けのイベント(ワークショップ)を開催したことがあります。「びーのびーの」にも参加の呼びかけを依頼されたのです。その趣旨に賛同したスタッフも含めて、お母さんたちや、周囲の人たちと共に、あちこちで声がけをしました。その甲斐あって、当日は30人くらいの会場に、3倍以上の参加者が溢れて大盛況でした。当初、行政の担当の方たちも笑顔でしたが、後で「これでは「びーのびーの」に依頼した意味がない。参加人数の把握や管理を、もっとしっかりやると思っていました」と非難するのです。これには私もカチンときました。そこでこんなことを伝えました。

 


「今回のワークショップはできるだけ多くの方に体験してもらい、さまざまなことに気づくことに意味があります。確かに予想外の参加者で大変でしたが、本来の意味を考えたら、こんな状態こそ成功だと思います。それを批判することは、何よりワークショップに賛同して走り回った参加者やスタッフたちにとって失礼です。もし運営管理の方が大事だと思っているなら、私たちは一緒に活動することはできません。これが私たちの活動のベースですから。この問題についてきちんと話し合って意識の共有を図れないままだと「びーのびーの」は行政からの事業は単なる受け皿や、代替者になってしまいます。そんな主体がないままでは協働も対等な活動も担保できませんし、一歩も足を踏み出すことはできません」
 当時、「びーのびーの」は委託管理業務に60人近くの方が職員として実際は関わっており、途中で降りるとなると、これらの方が職を失うわけです。スタッフの中には「とりあえずここは妥協して、一緒に考えながら進めませんか」という方もいましたが、私にとって、これが活動の原点。ここを曖昧にしたまま動き続けることは不可能でした。どうしても譲れないのです。この信念は大事だったのです。この思いを関わってくれたみんなにきちんと返していきたい。支えていただいた住民や市民にも返していきたいのです。この問題は担当の上司の方や区長とも、何度も話あいを持ちましたが、残念ながら一番胸襟を開いて対話したかった担当の方の本音を聞くことはできないまま、転属になってしまいました。

 

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子育て支援の核となるお話

   ありがとうございました

           東田信子さんの感想

「びーのびーの」は国の子育て支援施策の元にもなった場、大先輩である原さんとは、お会いする機会もありましたが、立ち上げ話や、行政とのチャブ台返しの話など、初めて伺いました。すごかったです。子育て支援の核となるお話、ありがとうございました。

正直あまり信用しすぎてはいけません

            T.eng氏の感想
 役所との話を聞いて言いて毎回思うのは、あの世界は想像以上に魑魅魍魎、あるいは悪鬼羅刹の世界ということです…。私が関わっている放送でも行政と一緒に仕事をする場合がありますが、ある生放送が番組改編後も継続している最中に急に「予算が認められなかったので、今回は中止でお願いします」という連絡が入ることもあります。それはないよと思いながら、必死に別の企画を立てて、ようやく放送の穴を埋めたこともあります。お役所にも面白い尖った人がいないわけではありませんが、やはり内容よりも自分の立場を守ることを優先しがちです。結局、話していることと思っていることが乖離してしまう。正直、あまり信用しすぎてはいけないとも感じています。

子育てに関わる人たちを大切にしたい
原さん:私も行政の方に半ば裏切られたみたいな状況に陥ることもあります。行政の担当の方は仕事上、さまざまな市民からの苦情を受ける立場にあり訳で、どうしても守りに入ってしまうこともあります。でも私は子育ての部分においては、常に性善説をとっています。裏切られても信じていきたいのです。子育ての部分で関わってきたスタッフやさまざまな人たちを大切にしたい、リスペクトしたいと思っています。

違いよりも似ているところが

                               浮かんできました

                     中城の感想
 本日の多田図尋常小学校の授業をありがとうございました。先日の打ち合わせのように浮かんでくる好奇心のままにお話ができればと思っていたのですが授業が始まり、参加者された方々のお顔を見た途端、「ちゃんとやらねば」という思いが浮び自由どころか右往左往してしまいました。
 今回の授業は、「超個人的な」面白さを頼りに進めてきた私の動きとは対照的に「社会的な」ポジションを明確にされている原さんたちの活動との違いを知りたくお願いしたのですが、そこから浮かんできたのは別のことでした。
 原さんが一番大切にしてきたことが、世の中のニーズに対応するよりも、「関わったスタッフ自身が少しでも幸せになること」で行政の対応においても、そこを一歩も譲らなかったというお話は、うるうるしそうになりました。このお話は、私が社会的な正しさよりも自分の好奇心を頼りに動こうと思ったことや、面白くなかったらいつでもやめようと決めてきたことなどとどこかで似ている。そんなことを思ったのでした。うるうる。
ぜひ今後も打ち合わせと称した雑談をお願いしたいと思います。

自分の価値観が揺さぶられ

        拡げられるような日々 

                原さんの感想
 昨日は貴重な機会を頂きありがとうございました。中城さんたちの鋭くも洞察が深い方とのセッションとても有意義でした。同じ子育て支援拠点事業を担い、かつ、お付き合いも長く深い東田さんには逆にお忙しい中に参加して頂いたにもかかわらず、驚かせたというか、がっかりさせてしまう話だったかもしれません(笑)(;^_^A・・・。

  でも私にとってはとても豊かな時間でした。活動は活動紹介よりなぜその活動をしているのか(してきたのか)という問いを深堀していく方が大事だと思います。今回はそんなお時間を中城さんに頂いたと思います。自分の好きやこだわりや大事にしていきたいことを優先していける社会になって欲しいし、そんな姿勢を持って継続している中城さんみたいな人がこんなお近くにいたことを知り嬉しかったです。

 中城さんの周りにはT.engさんも含めて、もっと会いたくもっと話していたいと思わせてくれる方々が多く集われているんですね。それはひとえに中城さんのお人柄とミッションによるのだろうな、と思いました。1度 中城さんのカフェにも足を運ばせてください。また大倉山にお越しの際はお立ち寄りください。江口、原でお待ちしています。
   この活動をしていると中城さんもそうかと思いますが、単純に「へー!ほー!」という方々とたくさん出会えて自分の価値観が揺さぶられ、拡げられるような日々でとても学びになります。今、私自身は直接親子と関わる現場からは一線退いていますが、この醍醐味を感じるスタッフ、ボランティアさんらの化学反応や戸惑いや野太くなっていく姿をほほえましく頼もしく見れる、これまた素晴らしい場を頂いていることに感謝しています。
 中城さん、またたくさんお話しさせてください♬地域でのステキな場と時間をありがとうございます。